5008-03

Hosai Arina Essay Course 2006

　　
「私と娘」　　（山野散歩）

　いつまでも暑い夏にうんざりして、秋が待ちどうしくなった頃、　娘に赤ちゃんが産まれた。

｛長いことかかったな。１日以上も。しんどかったね。うーん　ごくろうさん｝

出産直後の、心底疲れているのに、喜び一杯の娘の表情を見ながら思った。
そんな疲れもどんどん回復する早さに、女性の底力を感じてきた。

「パパ、ものすごおくしんどかったよー」

差し出した娘の手を握ってあげるタイミングを損ねたことを、まだ少し後悔している。

｛よく頑張ったね｝　という声も家族の祝福に掻き消されて届かなかった。

いつも手元には居なかった娘が、急に身近になった。
いままで、どう接していいいかわからず、　すれ違いが多かった娘と私。

赤ちゃんの事に理由をつけて、なにかと、呼び出されることが多くなった。
我が子の世話に明け暮れる娘は、とても幸せそう。　大変なのに子育てを楽しんでいる。

こういうかたちで娘も幸せを手に入れたのだ。

なかなか赤ちゃんを抱けなかった。　右手はどこ持つの？　首はどう支えるたら？
柔らかいガラスの人形みたいだった。

お宮参りなど、いろんな行事の度に、すこしずつ娘の主人の人柄が分かってきた。

突然、レストランに呼び出されて、紹介された。

「もう、３年付き合ってるの」

「結婚式は海外でしたいな」

久しぶりに、真っ白い砂浜と、エメレルドブルーの海を楽しんだと思ったら
もう、抱っこ紐がよく似合う母親になっていた。

そうだ、五月人形を観にいこう。

(山野散歩)

【作品整理番号】:　３５００８０３
【ペンネーム】:　山野散歩
【課題】:第３回目の課題　　「私の日常」
【題名】:　「私と娘」

宝彩有菜のコメント

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