5008-02

Hosai Arina Essay Course 2006

　　
「山歩き」　　（ヒゲ坊主）

山歩きは私の楽しみです。　
今日も電車やレトロなケーブルカーを乗り継いで、山へ来ました。ワクワクしながら木々や道端に咲く花を観ながら、自然を堪能します。

時々動物に出会うのが楽しい。
あるときウサギに遇った時は驚きました。丸い目で不思議そうに私を見ていた。なんでこんなところに？

分かれ道に出た。あれ、どっちかな　思う間もなく後ろから来た人に聞くと、どっちも同じ道に出るとのこと。
先に行ったその人に追いついたら、
「よく山へ来られますか」　
「はい、週に５日は山男してます」
「どうりで速いと思いました」
そんなに早歩きかな？　

「この山は全山歩いて、あとここだけです」
「ここは難所はないけど距離があるからね」
「それもまた楽しいですね」

色黒のベテランハイカー風のその人と、楽しくお話しながら山道を歩いた。
「もうすこしゆくと、競馬場が見えます。いつもそこで休憩するんですよ」

ほんとだ、ここの眺めは最高だ。家がおもちゃのようで、つい、手でつまみ上げたくなる。
彼は座って水を飲みだしたので、お先にと言ってお別れした。なごり惜しかったけど、別れのタイミングを大切にしたかった。

また、１人で気軽に歩いていたら、若い人が道端を覘きこんでいる。
「なにが居るんですか」
「猫がいるんですよ」
「えーこんなところに。どこから来たのかな」
言い終わらないうちに彼は話し出した。

「ここにいたら可愛そうだから、人が住んでる所まで連れて行きたいんです」
「賛成です。ここ餌がないものね」
「ついて来てくれるかな」　
その表現が子供の頃を思い出させた。
学校の帰り、猫を見つけては拾って帰り、よく母に叱られた記憶が蘇ってきた。
捨てに行く時の悲しさも思い出した。

「ほって置けばいいのに」とは言えなかった。
「呼びながら連れていけば、ついてきますよ。なついてるみたいだから」

麓のお寺に着いたら、先に彼らが着いていてお別れしているところだった。
猫は私をちらっとみると、壁のむこうへ消えてしまった。　おい、元気でね。

そんな猫をみてすこし心配したが、心は落ち着いた。

（ヒゲ坊主）

【作品整理番号】　３５００８０２
【ペンネーム】:ヒゲ坊主
【課題】:第２回目の課題　　「あの時の私」
【題名】:「山歩き」

宝彩有菜のコメント

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