Hosai Arina Essay Course 2005

　　　一人暮らしと私。　　（かるん）

　何もかも全て一人でやってみたい。それが、一人暮らしを始めたきっかけだった。
　生活費はぎりぎりである、私にできるだろうか、そんな不安を抱えていたが、いつまで悩んで迷っていても仕方がない。やれなかったらやれなかったでもいい、とりあえず動きだそう・・・そう決心を固め、私は一人暮らしをすることにした。

　それまで私は親と同居していた。
　多少の気ままは許されたし、特別門限などもなかった。自由といえば自由に暮らせた。だが、少しずつどこかで息苦しさを感じてくるようになった。誰にも干渉されない時間と空間が欲しくなったのである。遅かれながらの自立であった。今振り返れば、気持ちの奥底ではもしかしたらずっとそういった気持ちが眠っていたのかもしれない。ただ、それまでの私にはそれを行動に移す勇気がなかった。

　それからというもの、アパート決めも早かった。
　休日だったが何件かの不動産屋に電話をかけ、手ごろな物件を探してもらった。それほど期待はしていなかったが、偶然にも建てたばかりだという、家賃も手ごろの物件を紹介された。すぐに下見もさせてくれるらしい。何だか私は気分が高まってきて、いつの間にか一人暮らしへ対する不安などどこかへ吹っ飛んでしまっていた。

　そのアパートは実家からそう遠くもなく、もの静かな住宅地の一角に建っていた。
　こじんまりとして決して広くはなかったが、一人暮らしをするには十分だった。
　私はそのアパートに一目ぼれをし、即決した。
　その瞬間、何ともいえない自由と解放感が身体中を走った。
　一人で暮らせることを、これ程までに楽しめるとは思ってもみなかったのである。

　実際一人暮らしをしてみると何とかなるもので、気にかかっていたことなど全く問題ではなかった。一人暮らしを経験したことによって、親へのありがたさも実感することができた。同じ家の下にいると、距離が近すぎて見えない部分がたくさんあった。距離を置くことは、お互いがお互いを知る良い経験になっていたのだと思う。どちらにとってもプラス作用となっていたに違いない。私にとってはそれ以上の経験で、一人暮らしを通して以前の自分とは違う、自信のある私と出会うことができた。
　
　迷いながらもあのとき決断したことは、これからの人生では大切な経験だった。

　今は嫁いで新しい家族構成で暮らしている。あの頃のような自由な時間や空間は減ったが、それなりに日々生活している。今でも時々一人暮らしをしていたを当時のことを懐かしく思い出す。あのアパートでは、誰かがまた一人暮らしをしていることだろう。

（かるん）

【作品整理番号】　３５００６０２
【ペンネーム】:かるん
【課題】:第２回目の課題　「あの時の私」
【題名】:一人暮らしと私。

宝彩有菜のコメント

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