Hosai Arina Essay Course 2005

　　
カイダンの謎　　　（ひばな）

カイダンの謎。

そのビルは、三角形だった。（正確に言うと、三角柱だった。）

ひとり暮らしもおもしろそうだな、と思っていたときに
「いい部屋があるよ。」と知り合いの人に　教えてもらった場所である。

ビルの１階は、古道具屋さんで
店主は、ひょうひょうとした　雰囲気の人だった。
この人が、大家さんである。

ある日、大家さんに　４階の貸し部屋をみせてもらうことになった。

エレベーターはなく、階段を上がっていく。
２階も　貸部屋で、もう住んでいる人がいるそうだ。
３階は　お店になっていて、店のとなりに　大きな古い扉があった。

扉を開けて、まず　目にとびこんできたのが
家紋のついた垂れ幕（？）や　古びた椅子など、だった。
どうやら、古道具屋さんの倉庫がわりに　使っているスペースらしい。
「しゃれてるでしょ。」　大家さんが、藍色の垂れ幕をさして言った。
そこに、４階への階段もあった。
階段の踊り場にある小さな窓から、うっすら光が差し込んでいた。
その階段を上ったところにも　扉があり、扉をあけると　また扉だった。

部屋の下見をすませ、大家さんにお礼を言い　外に出た。

何日かして、三角ビルの前を通ったとき　不思議なことに気づいた。
どうみても　どう数えても、３階建てなのである。

後日、妹にそのことを話しながら　車で三角ビル方面に向かっていた。
「あっ！姉の言ってた部屋って、あのちょこっとでてるとこなんじゃ・・」
信号待ちで　妹の指さした方向を見ると、
三角ビルの屋上に、ちょこんと　おまけみたいにプレハブが建っていた。
（前は、ビルの近くから見上げたので　みえなかったのだ。）
「・・・・・。」
しばしの沈黙のあと、２人で大笑いしてしまった。

（ひばな）
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続・カイダンの謎。～開かずの扉編～　　　（ひばな）

実を言うと、私は　例の部屋をかりることにしたのである。
三方テラス付き（三角形の屋上に四角形の部屋が建っているので・・）
しゃれた雰囲気のペントハウス・・・！？
ベランダで、春になったら　ガーデニング、夏は　バーベキュー、
私の夢は　ふくらんだ。

１階の古道具屋さんに　家賃を払いにいったとき、
「これ、よかったら使ってください。」
大家さんが、レトロな朱い電気ストーブをだしてきてくれた。

３階のお店は、洋服のリサイクルショップだった。
ここの女店長さんにも　挨拶をすませ、私は無事　このビルの住人となった。

数日は、何事もなく　新しい生活に必要なものをそろえたりしながら過ごした。
今までは　通勤に時間がかかっていたのが、職場近くの部屋だったのでそういう意味では　便利になった。（そのためにも　かりたのだけど。）

しかし、ある日　事件は起こった。

その日は　休日だったので、朝はのんびりと過ごしていた。
午後からでかけようと　ゆったり準備をし、２つある４階の扉の鍵を閉め、３階への階段を　あしどりも軽く下りていった。

ガチャ・・・？
ガチャ、ガチャ　ガチャ・・
ドアノブはまわるのだけれど、何度ためしても　３階の扉が開かないのである。
いつも仕事に行くときには　ちゃんと開いていたのに。

ガチャ、ガチャ　ガチャ、ガチャ。
もう何回か　押してみると、少しだけ　扉が開いた。
・・・開いた隙間から、みえた光景に　私はあ然とした。

そこには・・・！！！

リサイクルショップの洋服が、扉前まで　ところせましと並べられていたのだった。
「すいませ～ん。開けてくださ～い。」
店の奥の方にいるらしい店長さんに声をかけ、扉を開いてもらった。

いつもは、私が仕事にでた後に開店して　仕事から帰ってくると閉店しているので知らなかったが、商品が多いと　店長さんは、３階の扉前まで店開きしていたのだ。

寒さも本格的になってくると、風通しのいい４階の部屋は
暖房器具があまり役にたたず、私は風邪をひいてしまった。

「以前、住んでた子も　わりとすぐに出ていったのよ。
きっと、あの部屋　住みにくいのねぇ。」
私が　４階の部屋をかりるのをやめた話をすると、
３階のリサイクルショップの店長さんは、そう言って笑った。

自分の部屋に　自由な時間に出入りするのが難しいなんて、
そういうのも住みにくいっていいますから～～～。

こうして、私の夏のバーベキューの夢も　心の叫びも、
北風に　ぴゅ～っと　飛ばされてしまったのであった。
（ひばな）

【作品整理番号】　３５００２０４
【ペンネーム】:　ひばな
【課題】:第３・４回目の課題　「自由課題」
【題名】:カイダンの謎　（正）・（続）

宝彩有菜のコメント

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