Hosai Arina Essay Course 2005

　　
ぼくを探しに　　（春野　ひかり）

わたしはある本をここ数週間さがしてた。

前の職場の上司が「あなたに」といってかつて貸してくれた本。
不完全な形をした球体君が完璧になろうとして自分のかけらを探して旅する。
いろんなかけらと出会うんだけどどれも自分とぴったりこない、
で最後にようやっと自分とぴ　ったりのかけらに出会うんだけど、、、って話、、。

どうしてももう一度読みたくなって、ネットで見つけて家に届いて手に取った時は
懐かしさやらなにやら到底表現できない複雑な感情がわたしを包んだ。

その当時、本の内容はわかったし、どんな風な自分なのかもだいたいわかってるつもりだった。
でもピンとこなかった。
相手の気持ちを受け取ってなかったから。

今ならわかる。
まだまだうすっぺらで受け取る準備がぜんぜんできてなかったわたしも今ならみえる。

わたしは本をもいちど読みたかったんじゃないって気づいてた。
「絵を書いたら？絵を書くと心のいろんなものがでるよ。
わたしは失恋して自分の描いた絵をみて、自分てこんな激しかったんだって思ったよ」
ページをめくりながら、あんなこともこんなこともって彼女からのたくさんのプレゼントを改めて受け取った。
嬉しくてありがたくて申し訳なくて、。
涙をぼろぼろこぼしながら。

この本を手にとっているのは「受け取る方じゃないほう」がちょっとだけ多くなってきて
すこしは大人になったからだと思う。
彼女には直接ありがとうございますって言えないけど、
今の私はあったかいし、やさしい気もち。
あったまってあったまって
いつかふわ～ってやわらかい空気が彼女を包みますように。
「ぼくを探しに」の主人公が届けてくれますように。

【作品整理番号】　３５００４０１
【ペンネーム】:春野　ひかり
【課題】:第１回目の課題　「心があたたかくなったこと」
【副題】:「ぼくを探しに」

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